2015年11月8日日曜日

光る釜敷

8月末から10月初頭にかけて就活が終わって、学会も終わって、ふつうの茶会、高山旅行、淡交会の東海地区大会と大きなイベントも無事終えることができて、久しぶりに時間ができたのでブログを書いている。
私が家で普段使うPCにはマイクロソフトのオフィスが入っていないため申し訳程度の日本語変換しかしてくれない。先ほどから何度ブログと打っても部ログとしか変換されない。
部のログ(log :記録)だから間違ってなくはないけど、やっぱり違う。騙されてはいけない。

 さて、10月3日、4日に浜松市のアクトシティ浜松で第49回淡交会東海地区大会が行われ、技科大からは6人が参加した。
しかし、今回はあまり知り合いを増やすことはできなかった。それでも今回の高山旅行(これを合宿と言い張る人もいるけど、楽しむことに重点を置いているので旅行である)でお世話になった方々に挨拶することができた。ご多忙な中作陶体験を引き受けてくださった飛騨青年部の部長や東海地区ブロック幹事、間を取り持ってくださった三河青年部の副部長さん、監事さんなど、多くの方の手助けによって成り立っていたことを忘れてはならない。

新しいつながりというのはあまりなかったものの、青年部が主体のブロック席には20の各青年部の特色の現れた席が設けられた。

 前置きはこの辺にして、本題へ。
 今回の地区大会では技科大などの学生がしつらえた学生席が設けられた。ここではお盆、茶杓、風呂敷、釜敷、結界などを技科大生が作ってきた。そのうち、私は釜敷を作ってきたっものの、どうなっているかうまく説明できなかったのでここに記しておく。

 今回作った釜敷には赤色LEDが5個と、橙色LEDが1個ついている。(地区大会1日目の時点では赤色3個のみ)また、湯の音を鳴らすためにスピーカがついている。電源には単4のアルカリ乾電池を2本もしくはニッケル水素電池を3本使うことにした。
 ところで、皆様は1/f揺らぎというのをお聞きになったことはあるだろうか。風に揺れるろうそくやさざ波などのエネルギーは周波数に反比例する。(下のグラフは横軸、縦軸ともに対数 出典: Wikipedia)

1/fゆらぎは低周波側のエネルギーが大きく、高周波のエネルギーが小さいためピンクノイズとも呼ばれる。釜の松風もこれに近かったため、ピンクノイズを作ってLEDを光らせ、スピーカを鳴らせば実現できる。これらの制御にはマイクロコントローラ(マイコン)という小さなコンピュータを使っている。

さて、ピンクノイズを作り出す方法はいくつかあり、今回はM系列と呼ばれる擬似乱数に1次のローパスフィルタを通すことで実現した[1,2]。ローパスフィルタを通すことで高い周波数の成分を減らすことができる。
 今回は予算と消費電力の関係からすべての処理をマイクロチップ社の何でもあり8 ビットマイコンPIC16F1705を使って行った。[4]このマイコンのすごいところはアナログ-デジタルコンバータやパルス幅変調(PWM)は言うに及ばずOPアンプなども集積されている。I/Oピン(入出力ピン)ごとに50 mAまで流せて(IC全体では250 mAまで)これだけでわりとなんでもできそうだ。ただ、CPUが貧弱で掛け算ができないため(もちろん割り算もできない)、計算処理には工夫が必要だ。実際、フィルタ処理およびノイズ生成の処理が重く、きれいな音が出なかった。

 その後、改良を重ねた結果、ピンクノイズの生成にかかる時間を3 msから0.6 msまで減らすことができた。これによりだいぶましな音が出せるようになった。

 スピーカとLEDのドライブにはPWM制御を使っており、スピーカは最近流行のD級アンプを使っている。D級アンプは、電力損失が少なく、今回のような使える電力が制限される場合にも有効だ。なお、音量調整用に可変抵抗をつけているが、プログラムでは有効になっていない。本当はじっくり回路を検証しかかったのですが、時間的制約によりかなり荒削りだ。



こちらは基板のパターン。今回はなるべく小型の基板にしたかったため約半数の部品をチップ部品にしている。

6ピンのピンヘッダはマイコンへのプログラム書き込み用だ。
しかし、比較的大きめの部品を使っていますのではんだ付けはそこまで難しくないでしょう。

  そのように回路を組み、コンセントが使えないということで電源は単4電池からとり、釜敷の枠に入れて見えないようにした。 外側はそこそこの大きさのポットを置くことを想定して一辺149 mmにして、厚さは20 mmにした。ヒノキの角材とベニヤ板を切り出して、電池ボックスの部分は研究室にあるフライス加工機を借りて削った。
単4電池を入れるスペースは電池3本分ありますが、これはニッケル水素電池などの充電地を使うときに使ってください。アルカリ乾電池などを使うなら2本で十分だ。消費電流は50 mA程度なので、18時間くらいは電池交換なしで動く。
 また、天板側には2 mmのアクリル板を張り、裏側に1200番の紙やすりでやすりがけして、光が拡散しやすいようにした。


 最後に、参考までに回路図と基盤のパターンなどを載せておりますが、自己責任でご自由にお使いください。動作の保障はいたしません。

[参考文献等]
[1]1 m~100 kHz! 汎用ロジックICで作るランダム雑音ジェネレータ, 登地 功, トランジスタ技術2015年10月号 pp.122~132.
[2]線形帰還シフトレジスタ、https://ja.wikipedia.org/wiki/線形帰還シフトレジスタ
[3]プログラムでデジタルフィルタ、http://bluefish.orz.hm/sdoc/fftw_digifil.html
[4] MPLABの使い方 16F1705覚書、http://www.geocities.jp/zattouka/GarageHouse/micon/MPLAB/16F1705/memo.htm

[ざっくりした解説]
・マイコン マイクロコントローラもしくはマイクロコンピュータと呼ばれる小さなコンピュータのこと。身近なところでは炊飯器やエアコンなどを制御している。今回はコンピュータとして必要な回路がすべて1つにチップに収まったワンチップマイコンと呼ばれるものを使った。

・アナログデジタルコンバータ(ADC) コンピュータはアナログデータをそのままでは扱えないため、デジタルデータに半冠する必要がある。アナログデジタルコンバータは電圧信号をデジタルデータに変換する装置。スマホのマイクの部分やデジタル温度計などにも使われている。

・パルス幅変調(Pulse Width Modulation : PWM) スイッチのON/OFFの時間間隔を変えて出力される電圧などを変える手法。電車やハイブリッドカー、IHからスマホまで幅広く使われている。イメージとしてはLEDを高速で点滅させることを考える。このとき、光っている時間と消えている時間を変えていて、光っている時間のほうが長ければ明るく、消えている時間のほうが長ければ暗く見える。

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